毎度ばかばかしいところで恐れ入ります
 

 
もらいものの団扇(うちわ)

 
きもの落語

 「もらいものの団扇(うちわ)」


 毎度ばかばかしいお笑いで恐れ入りますが、
初夏に向かいましてな、呉服屋を商いします面々、今日は毎月の研究会ということで集まって参りましてな…

この季節でありますから、課題を「ひとえもの」をどうしたら買っていただけるか、良い知恵を出し合おうということになりましてな。
あーだ、こーだ。と話し合っているうちに、

「商売繁盛を願うなら、情操の方も少しは磨いておかなければ…」、と提案がありましてな…、
「日帰り旅行がいいねー。神社仏閣参り、美術館巡りもいいよっ!…」

てんで、研究会の課題が日帰り温泉をどうするかって、早く言えば遊ぶ話しの研究会になってしまいましてな、まあ、そうゆう話しは早く決まるもんでありましてな…
つごうの良い日が三日後と決まりました。

「おーい、みんなあつまったかーい!… なに、集まった。出かけましょうー!」

大勢集まると気が大きくなるものでありましてな、
夜の温泉がなにより頭が冴えるとか言い出しましてな、あっと言う間に泊まりの研究会?になってしまいましてな…

呉服屋の面々、近ごろ手元不如意でありますから、
「幹事さん。イッチばん高級な宿を頼むヨ
「芸者さんの代わりに仲居さんを呼べ!…」
なにも、威張って呼ばなくとも、料理運びに来るんでありますが…

幹事さんが予算を考えての旅館に着きましてな。
「畳の色がいいねー。」
「茶色は落ち着くねー…」
料理の品数もたいしたもんで、仲居さんが一度運べば済むという、豪遊?ぶりでしてな、

「お姉さん!閑だったら、一緒に飲もう・・」
(こんな、お客ばっかりだからヒマなのよ!売り上げ貢献に飲もう…)
って、仲居のお姉さんも、愛想笑いでお酌をしながら、ご自身もガブガブ飲み始めましたが…

女性が入ると座が変わるものでございます。
男なんてー者は、酒が入っていーい機嫌になりますと、近くの御婦人がいつのまにやら、美人に見えてくるものでありましてな、…
いえ、わたしの周りのご婦人がたは、酒が入らなくとも美人さんばかりでいらっしゃいますが…


 たった一人の仲居のお姉さんが座に入っただけで違うもんでありましてな、
 面々、(少しもてようか)なんて…粋な旦那衆を演じ始めておりますが…

 「幹事さん!今日も勉強の会ですよッ。みんなが、いい気分になったんだ、  いつもの大喜利をやりましょうや」
 「いいねえ、ヨネさん。お姉さんに学の有るとこ見せようって…抜け駆けはダ メだよーン」
どうです、題はお姉さんにおまかせしましよう」

「なんて言っといて、あらかじめお姉さんと相談が出来上がっているんじゃなーい?…」
それじゃあ、お姉さん。お題をひとつ…」


「ハーイ。今夜は『お勉強会』だそうで、ひとえのきものと掛けてなんと解く?…」
「いいねえ、オッと、ヨネさん早いねえ」
「川端に建つ家と解きます」
「その心は?」
「裏がありません!」
「上手いねえ。…でも答が早すぎるなー。相談、できちゃっていたなー?」

「ヤマさん、どうです。」
「俺かい、えーと、ひとえのきものと掛けて、落語の長屋の花見にでてくる、カマボコと解く・・」
「ほうほう、その心は?」
「軽くて薄いです!」
「単衣は軽くて薄いが一番!…ヤマさん、長屋の花見の蒲鉾は大根でしたよね。沢庵が卵焼きで…それが薄かったではなかったかい?」
「アッそうか。じゃー桂歌丸師匠と解く」
「薄いってんだろう!」
 
 「・・・タカさん、お酒の好きなところで、ひとつ・・」
 「ハイ、朝、バス停に並ぶお父さんと解く。」
 「その心は?」
 「朝の順番は清々しいです。」
 「うまいねえ、『麻の襦袢』は涼しいからねえ…。…ちなみに夜は?」
 「飲まずに、おじや(小千谷)を食って寂しく縮み(ちぢみ)ます!」
        「うまい!…勇気(結城)があるねえ・・」

「お客さんたちー、上手いんですねえ」
仲居のお姉さん、拍手も忙しいんですが、お酒の方もガブガブいそがしいんでありましてな、からだが熱くなってきたもんで、持参の団扇(うちわ)で、パタパタ扇いでおります。

「お姉さん、本格的に飲み始めましたね。なんです?その団扇(うちわ)は…。骨がプラスチツクじゃないですか?色気がありませんネー。うちわは、竹の骨に和紙がいいと思いませんか?…ニッポンの心ですヨ!」
「すみませんねー。このうちわ、貰い物なんですよ。私と違って色気は無いけど風は来ますヨー。どうも歳をとりますと、のぼせ気味になるもんで…こんどはビールで身体を冷やしますヨー…」
ッてんで、こんどはビールをガブガブ飲んでおりましてな…

「キヨさん。ひとえのきものと掛けて?
「ちょっと長いですが、奥さんに小遣いをねだる、宴会の日の新婚さんと解きます。」
「長いねえ。で、その心は?」
「どうしても一枚は欲しい!」
「可愛いなー。一枚と言わず二枚でも三枚でもあげたいねえ」

 「僕なら、もう五枚は応援したいねえ。今日はだめだけど…」
 ガブガブの仲居のお姉さん、うんうんと色気たっぷりな相づちをうっています が(いつもダメなんでしょう)…


 「マツさん、あんたはどう解く?」
 「きましたね、ひとえのきものと掛けて、落語家になった呉服屋と解き  ます」
「そのこころは?」
「この時期、センス(扇子)が光ります」
「上手いねえ。しかも扇子を前に置いたくらいにして。…その扇子、上物だね」



 マドンナになって居たはずの仲居のお姉さん、ベロベロに酔っておりましてな、

 「上物の扇子?、なに言ってんですよ。ひとえもののきものと掛けて、『 豪遊?』する皆さんと解く!」

 「・・・」

 「その心は?と、言ってよ!・・優しく言ってるうちにさあー!
 ビールも
酒も無いってばー
!」

一座の面々、「そ、その心は?」
「皆さん、もらい物の、この団扇(うちわ)が似合います!」

             文 イチコクヤ亭主

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わたしは、越後のちりめん問屋、いえ落語家も志望の者です。

本業は「越後新潟にぎやか座」の「色物」の口座で昔話をかたる語り部の、ちりめん越後、と申します。