柴又「帝釈天」と野菊の墓「西蓮寺」

 

柴又「帝釈天」と野菊の墓の「西蓮寺」

イチコクヤ発行の「きものさろん」掲載文より

今年のイチコクヤ友の会の1泊旅行は「柴又と足利の探索」でした。

お客様9名様とご一緒して、秋晴れの空のように楽しく過ごさせていただきました。御報告申し上げます。


帝釈天の参道には、「寅さん映画」の雰囲気そのままの店々が軒を重ねて賑やかです。お客様は先ず、「帝釈天」さまにお参りをなされます…。

「帝釈天」さまは、伽藍の柱や壁、天井まで力強い彫刻をほどこした総けやき造りの豪快な建物でした。
彫刻には、仏教の教えの様子を力いっぱい彫りこんで、私達参詣者に伝えようとしています。
伽藍と伽藍の間には、手入れの行き届いた庭園が配されています。

私は参拝者の多さに少々圧倒されました。エスカレーターにでも乗っているように押されて、彫刻と庭園の美しさをなんとなく観てしまった参拝ぶりでした。

参道に戻ってさわやかな風を受けると、またいつもの旅人に戻れたようです。
あちこちから威勢のよい呼び込みが聞こえてきます。
威勢につられて、案内人の私も、

「お客様、先ず昼食とまいりましょう。塩味の濃い江戸前の鰻の蒲焼き、江戸前の海老天丼、いろいろございますよ!」
呼び込みの手伝い屋になったわけではありませんが…


醤油ベースの名物料理を堪能したあとは…
さあダンゴです!入り場所が違います。
寅屋のダンゴが、いいえ、本家とら屋の味の方がとか、呼び込みに引かれて食べ比べです。
これは後で腹にグッと来ました。
それに佃煮屋と、せんべい屋も軒を並べているんですから…


腹ごなしにと歩きました。

江戸川べりへは「矢切の渡し」…
向こう岸までの舟賃は百文。
舟は実に静かです。
船頭さんが竿をさすと、すいーと川を渡りはじめました。

水面と同じくらいの位置から、川渡りの風景を望んでいます。
旅人はいつか無言となりました。


江戸川を渡ると、すぐ脇に河川敷ゴルフ場がひろがります。
爽やかな風を受けたプレーぶり、ここにも静かさが広がります。


土手に上がると、遠くまで望めるのどかな田園風景が開けました。
周りは広大なねぎ畑、はるか前方の丘陵地にポツンと寺の屋根らしき姿を望めます。
そこにまで通じているのか一本の道…

秋晴れの下、お寺の屋根に引かれるように歩いて20分ほど、「西蓮寺」につきました。
伊藤左千夫の「野菊の墓」の舞台になったと言われています。
小さくて、静かで、なぜか悲しい雰囲気を感じさせるお寺さん。
それぞれのお客様は、悲恋の物語を思い出している御様子で、美しい女性徒にもどっていらっしゃるように見えました。

お客様から、「西蓮寺」に寄せられた左千夫の和歌を解説してもいただきました。
私には、静かな時を過ごせた、至極の旅となりました。


平成2年秋

 *この旅は、夕刻、浅草駅から私鉄で「足利」へ向かって続いています。

文 イチコクヤ亭主

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